私の志集
2005年 10月 26日
彼女の名は「冬子」さん。
夜の新宿駅の西口に立って詩集を売っている。
首から「私の志集」と書かれたボードを下げて、虚空を見つめたまま立っている。1冊300円。詩集では無くて「志集」なのだ。
僕が初めてこの女性を見たのはかれこれ20年程前になる。当時の僕は、大学を中退して夜間の音楽学校に通いながら、バイトとバンドの練習に明け暮れる日々だった。今でいうフリーターの走りか。大見栄を切って親元を飛び出したものの、夢を追いながら生活費を稼ぎ出し、独りで生きていくことの大変さを身を持って知った。昼間のバイトを終えてアパートのある丸の内線新中野まで戻り、学校へ行くためギターを抱えて再び電車に乗って、丸の内線の新宿駅西口改札を出る。
冬子さんはいつも同じ場所に立ち、首からボードを下げて虚空を見つめていた。清楚(というか古風)で綺麗な感じの女性だった。
初めて見たときには正直ギョッとした。首からボードを下げて街頭に立つ若い女性・・故郷の福岡の街では見かけたことがなかった。
「年齢は俺と同じ20歳くらいやろうか?なして?東京ってやっぱ・・えずか(怖い)街ばい・・」
僕の頭の中ではそんな博多弁が響き渡っていた。
それから数年後、僕はミュージシャンになる夢を諦めて、絶対になりたくないと思っていた会社員になり、その3年後にバブルが崩壊した。
月日は更に流れる・・・
そして4年ほど前・・・新宿西口の夜の雑踏の中、柱の陰に佇む女性を見かけた。
冬子さんだった・・信じられないことに、20年前と同じ服装、同じ髪型、同じ視線で同じボードを下げて立っていた。容姿は殆ど変わっていない(近くで良ぉ~く見たら違うのかも知れないけど・・)。
僕はちょっと感動して、近付いていったが、
「えっ?・・俺・・どうしよう・・詩集買ってみよっかな?でもなぁ~・・『私も詩を書く者です』とか言うのかよ・・やっぱやめとこう・・」
と、頭の中で響き渡る標準語に阻まれて、彼女の脇を素通りしていった。
変わらないものと変わってしまった自分・・酔った頭の中で、掃き溜めのようになった自分の過去の情報が錯綜して、思わず苦笑いをする。
その後、気になってGoogleで「私の志集」を検索してみた。
結構出て来る・・・
冬子さんと話したオンライン古書店の店主さんの記事を発見した。冬子さんより30歳以上年上の詩人の旦那さんが、初めて街頭に立ったときのお話が凄い・・・
http://www.vinet.or.jp/~toro/genko/syowa2.html
「今度会社帰りに、志集買ってみようなかぁ・・」
そう思っているうちに、冬子さんはいつも見かけていた場所から忽然と姿を消してしまった。
次に見かけるのは、また20年後か・・・冬子さんが立っていた場所を通り過ぎるとき、ふとそんな事を想ったりする。
夜の新宿駅の西口に立って詩集を売っている。
首から「私の志集」と書かれたボードを下げて、虚空を見つめたまま立っている。1冊300円。詩集では無くて「志集」なのだ。
僕が初めてこの女性を見たのはかれこれ20年程前になる。当時の僕は、大学を中退して夜間の音楽学校に通いながら、バイトとバンドの練習に明け暮れる日々だった。今でいうフリーターの走りか。大見栄を切って親元を飛び出したものの、夢を追いながら生活費を稼ぎ出し、独りで生きていくことの大変さを身を持って知った。昼間のバイトを終えてアパートのある丸の内線新中野まで戻り、学校へ行くためギターを抱えて再び電車に乗って、丸の内線の新宿駅西口改札を出る。
冬子さんはいつも同じ場所に立ち、首からボードを下げて虚空を見つめていた。清楚(というか古風)で綺麗な感じの女性だった。
初めて見たときには正直ギョッとした。首からボードを下げて街頭に立つ若い女性・・故郷の福岡の街では見かけたことがなかった。
「年齢は俺と同じ20歳くらいやろうか?なして?東京ってやっぱ・・えずか(怖い)街ばい・・」
僕の頭の中ではそんな博多弁が響き渡っていた。
それから数年後、僕はミュージシャンになる夢を諦めて、絶対になりたくないと思っていた会社員になり、その3年後にバブルが崩壊した。
月日は更に流れる・・・
そして4年ほど前・・・新宿西口の夜の雑踏の中、柱の陰に佇む女性を見かけた。
冬子さんだった・・信じられないことに、20年前と同じ服装、同じ髪型、同じ視線で同じボードを下げて立っていた。容姿は殆ど変わっていない(近くで良ぉ~く見たら違うのかも知れないけど・・)。
僕はちょっと感動して、近付いていったが、
「えっ?・・俺・・どうしよう・・詩集買ってみよっかな?でもなぁ~・・『私も詩を書く者です』とか言うのかよ・・やっぱやめとこう・・」
と、頭の中で響き渡る標準語に阻まれて、彼女の脇を素通りしていった。
変わらないものと変わってしまった自分・・酔った頭の中で、掃き溜めのようになった自分の過去の情報が錯綜して、思わず苦笑いをする。
その後、気になってGoogleで「私の志集」を検索してみた。
結構出て来る・・・
冬子さんと話したオンライン古書店の店主さんの記事を発見した。冬子さんより30歳以上年上の詩人の旦那さんが、初めて街頭に立ったときのお話が凄い・・・
http://www.vinet.or.jp/~toro/genko/syowa2.html
「今度会社帰りに、志集買ってみようなかぁ・・」
そう思っているうちに、冬子さんはいつも見かけていた場所から忽然と姿を消してしまった。
次に見かけるのは、また20年後か・・・冬子さんが立っていた場所を通り過ぎるとき、ふとそんな事を想ったりする。
by gauche3 | 2005-10-26 22:36 | ひとりごと | Trackback(2) | Comments(25)


